①バイカルハナウドとは?基本情報と特徴
バイカルハナウド(学名:Heracleum sosnowskyi)は、セリ科の多年草で、主にロシアや中央アジア原産の植物です。その外見は非常に印象的で、傘のように広がる白い花序と、高さ2〜3メートルにもなる茎が特徴です。
日本ではあまり馴染みのない植物ですが、ヨーロッパでは「ジャイアント・ホグウィード」の一種として問題視されています。
【バイカルハナウド】学名や分類、生育環境
バイカルハナウドはHeracleum属に属し、多くのセリ科植物と近縁です。
湿潤で栄養豊富な土壌を好み、道路脇、河川敷、放棄地などに繁殖します。
【バイカルハナウド】見た目の特徴(花・茎・葉)
・花:小さな白花が複数集まって傘状になる複散形花序
・茎:中空で斑点があり、触れると危険な成分を含む。幹に赤い斑点があるのが特徴。
・葉:大きく切れ込みがある複葉で、表面に細かい毛がある
② バイカルハナウドの毒性について
バイカルハナウドは見た目の美しさに反して強い毒性を持っています。これは「光毒性」と呼ばれるタイプで、皮膚に触れた部分が太陽光に反応して炎症や水ぶくれを引き起こします。
【バイカルハナウド】含有される有毒成分
主な有害物質はフラノクマリン類(furanocoumarins)で、これは植物が捕食者から身を守るために分泌する化学物質です。
【バイカルハナウド】摂取・接触時の症状と危険性
・皮膚に触れる → 数時間後に赤く腫れる
・日光に当たる → やけどのような症状、水ぶくれ
・重症例 → 色素沈着、長期にわたる皮膚炎
このような作用から、ヨーロッパでは「最も危険な植物」として警告され、誤って触れないよう注意が促されています。
③ バイカルハナウドと似ている植物との違い
バイカルハナウドは、日本に生育するハナウドやドクゼリと見た目が似ており、識別が難しい植物でもあります。
バイカルハナウドと似てる植物の比較一覧
項目 | バイカルハナウド | ノラニンジン | アマニュウ | オオバセンキュウ | エゾノシシウド | オオカサモチ | ドクゼリ | エゾニュウ | エゾノヨロイグサ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
科・属 | セリ科 ハナウド属 | セリ科 ニンジン属 | セリ科 シシウド属 | セリ科 センキュウ属 | セリ科 シシウド属 | セリ科 ハナウド属 | セリ科 ドクゼリ属 | セリ科 ハナウド属 | セリ科 シシウド属 |
草丈 | 1.5〜2.5m | 30〜100cm | 1〜2m | 1〜1.5m | 1〜2.5m | 1.5〜3m | 0.5〜1m | 2〜3m | 1〜2m |
生活型 | 多年草 | 二年草 | 多年草 | 多年草 | 多年草 | 多年草 | 多年草 | 多年草 | 多年草 |
生育環境 | 北海道・草原・山地 | 道端、空き地 | 山地の林縁や湿地 | 山の湿った草地 | 北日本の林縁や湿地 | 山地や河川敷 | 湿地、水辺 | 北日本の草原や林縁 | 北日本の山地草原 |
葉の特徴 | 羽状複葉、大きく裂ける | 羽状複葉、ニンジン状 | 大型、2〜3回羽状複葉、鋸歯 | 2〜3回羽状複葉、鋸歯あり | 3回羽状複葉で厚みあり | 巨大な羽状複葉 | 細かく裂けた羽状複葉 | 大きく3裂、鋸歯あり | 羽状複葉、鋸歯あり |
茎の特徴 | 太く中空、紫斑あり | 細く中空、赤みあり | 紫褐色を帯びる中空茎 | 中空で直立 | 紫色を帯びる | 太く縦筋あり、中空 | 横に走る匐枝あり | 太く中空、紫斑あり | 太く赤紫色 |
花の特徴 | 白い大傘状花序(20cm以上) | 白花で中央に紫花が混じる | 白〜淡緑色、傘状 | 白、傘状 | 白〜淡緑色、大傘状 | 白、大きな傘状花序 | 白、小型、傘状(猛毒) | 白、大傘状(30cm超) | 濃赤紫、傘状(色が特徴) |
バイカルハナウドの安全な見分け方のポイント
・茎の斑点と高さに注目
・触れる前に手袋を着用し、肌の露出を避ける
・名前や形だけで判断せず、地域の図鑑などで照合する
怪しい場合は絶対に触らないこと!
1. ノラニンジン(Daucus carota)
- 科・属:セリ科ニンジン属
- 草丈:30〜100cm
- 生活型:二年草
- 生える場所:道端、空き地、日当たりの良い草地
- 特徴:
・葉はニンジンに似た羽状複葉。
・茎は中空で細く、赤みがかることもある。
・花は小さな白花が密集し、中央に1つだけ暗紫色の花があるのが特徴的。
2. アマニュウ(Angelica pubescens)
- 科・属:セリ科シシウド属
- 草丈:1〜2m
- 生活型:多年草
- 生える場所:山地の林縁や湿地
- 特徴:
・茎は中空で紫褐色を帯びる。
・葉は大きな2〜3回羽状複葉で縁に鋸歯あり。
・花は白〜淡緑色、傘状に開花。
3. オオバセンキュウ(Cnidium officinale)
- 科・属:セリ科センキュウ属
- 草丈:1〜1.5m
- 生活型:多年草
- 生える場所:山地の湿った草地
- 特徴:
・茎は直立し中空。
・葉は2〜3回羽状複葉、縁に鋸歯。
・白色の花が傘状花序で多数咲く。漢方薬の原料にもなる。
4. エゾノシシウド(Angelica ursina)
- 科・属:セリ科シシウド属
- 草丈:1〜2.5m
- 生活型:多年草
- 生える場所:北海道〜本州北部の湿った林縁
- 特徴:
・葉は大型で厚みがあり、3回羽状複葉。
・茎は紫色を帯びる。
・花は白色〜淡緑色で直径20cm以上の傘形花序を形成。
5. オオカサモチ(Heracleum moellendorffii)
- 科・属:セリ科ハナウド属
- 草丈:1.5〜3m
- 生活型:多年草
- 生える場所:山地の草原や河川敷
- 特徴:
・葉は非常に大きく羽状に裂ける。
・茎は太く、中空で縦に筋が入る。
・白い花を大きな傘状に咲かせ、見た目がバイカルハナウドに非常によく似る。
6. ドクゼリ(Cicuta virosa)
- 科・属:セリ科ドクゼリ属
- 草丈:0.5〜1m
- 生活型:多年草
- 生える場所:水辺や湿地
- 特徴:
・葉は細かく裂けた羽状複葉。
・茎の基部に空洞があり、横に走る匐枝(ほふく茎)が特徴的。
・白い小花が傘状に多数咲く。全草に猛毒を含み、誤食厳禁。
7. エゾニュウ(Heracleum maximum subsp. japonicum)
- 科・属:セリ科ハナウド属
- 草丈:2〜3m
- 生活型:多年草
- 生える場所:北海道〜本州北部の草原や林縁
- 特徴:
・大形の葉は3裂し鋸歯がある。
・茎は太くて中空、紫色の斑点があることも。
・白い花が直径30cm以上の大きな傘状に咲く。
8. エゾノヨロイグサ(Angelica gigas)
- 科・属:セリ科シシウド属
- 草丈:1〜2m
- 生活型:多年草
- 生える場所:北海道・本州北部の山地草原
- 特徴:
・葉は羽状で大きく、縁に鋸歯。
・茎は太く、赤紫色が目立つ。
・濃い赤紫色の花を傘状に咲かせ、他の白花のセリ科と区別しやすい。
④ バイカルハナウドの生息地と分布状況
バイカルハナウドは本来ロシア周辺の植物ですが、園芸用としてヨーロッパに持ち込まれた結果、外来種として各地に広がりました。
バイカルハナウドの日本の分布状況
2025年にバイカルハナウドらしき植物が北海道で確認されました(事実確認中)。強い毒性を持つことから注意喚起がされ始めています。
【お知らせ】
— 北海道大学 (@HokkaidoUnivPR) June 25, 2025
毒性の疑いのある植物の生育について
詳細はこちらhttps://t.co/0MjgaPj5Kl#北海道大学 #北大
バイカルハナウドの発見場所
日本では2025年6月にバイカルハナウドらしき植物が発見されました。
場所は北海道大学の構内ので発見。立ち入り禁止などの策が取られている様です。
【北大に世界一危険な猛毒植物「バイカルハナウド」生育か 国内未確認、調査へ】
— 札幌災害情報 (@sapporo_119) June 25, 2025
ヤフーニュース…
しかし今回話題になったことをきっかけに「以前みたことがある」というような声も上がっており、いつ頃日本に入ってきたかはまだ確定されていません。
映像見たけれどここって大きな道からセコマや中食に抜けていく道のところだよね?
— くまじろう (@kumajiro54) June 26, 2025
いつからあったかわからないけれど、私この道でこの植物見た記憶あるわ。
猛毒“最も危険な植物”バイカルハナウドか 北海道大学構内に10株 国内初確認か 近づかないよう注意 https://t.co/GQaToWyApn @YouTubeより
また、札幌市白石区でも新たにバイカルハナウドらしきものが確認されました(駆除済み)
【環境局】
— 札幌市広報部 (@Sapporo_PRD) July 2, 2025
白石区東札幌1条6丁目「白石こころーど」付近で、バイカルハナウドらしき毒性の疑いのある植物を確認し、除去いたしました。似たような植物を見つけた場合は、決して近づかず、写真を添付の上、環境共生担当課までメール(kakkou@city.sapporo.jp、容量4MB以内)でご連絡ください。 pic.twitter.com/lNFdE2i6J1
バイカルハナウドの駆除や管理の方法
駆除作業は非常に慎重を要し、
・専用の防護服
・切除後の土壌処理
・焼却処理による完全除去
が推奨されます。自治体と連携し、個人では対応しないことが基本です。
⑤ なぜバイカルハナウドに注意が必要なのか?
【バイカルハナウド】生態系や人への影響
・在来植物を駆逐するほどの繁殖力
・動物や人間に直接的な皮膚被害
・生態系への影響
【バイカルハナウド】今後の対策と教育の必要性
バイカルハナウドのような有毒外来植物に対して、
・学校教育や地域ワークショップによる認知拡大
・画像データベースやアプリを活用した識別訓練
・住民による安全なモニタリングの導入
など、科学と市民の連携が鍵となります。
✅ 記事まとめ(要約)
バイカルハナウドは、見た目は美しくとも非常に強い毒性を持つ外来植物です。
特に皮膚に触れた後、太陽光によって炎症を起こす光毒性は非常に危険であり、誤って触れることで深刻な健康被害を引き起こすことがあります。見た目が似ている植物も多く、しっかりと見分け方を学ぶことが大切です。
その繁殖力と危険性から、日本でも外来種問題の一角として注目されており、今後の予防策や教育活動が重要となるでしょう。
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