トマト栽培における高温障害とは?
トマトは本来、比較的涼しい気候を好む植物で、昼間の温度が25℃前後、夜間は15〜20℃程度が生育に適した環境とされています。しかし、日本の夏は近年ますます暑さが厳しくなり、日中の気温が30℃を超えるのは当たり前、夜になっても25℃以下に下がらない「熱帯夜」が続くことも多くなっています。このような高温環境では、トマトは本来の生育リズムを乱され「高温障害」と呼ばれる症状を引き起こします。
具体的な症状としては、まず花が咲いても実がつかない「着果不良」。高温で花粉の発芽力が低下し、受粉がうまくいかなくなるためです。また、果実が肥大しても割れてしまう「裂果」や、お尻の部分が黒く変色する「尻腐れ果」も高温と関係しています。さらに、高温下では呼吸量が増える一方で光合成が抑制されるため、株全体が弱りやすく、葉焼けや茎の徒長も見られるようになります。
このように「高温障害」は単なる一つの症状ではなく、栽培全体のバランスを崩す大きなリスク要因となります。したがって、農家や家庭菜園愛好家にとっては避けて通れない課題といえるでしょう。
高温障害の原因と発生条件
トマトの高温障害は、主に気温と夜温の上昇によって起こります。昼間の気温が30℃を超えると、花粉の機能が低下しやすく、実がつきにくくなります。特に35℃を超えると障害は顕著になり、花自体が落ちてしまう「花落ち」が多発します。
また、夜温が下がらないことも深刻です。植物は昼間に光合成で作った養分を夜間に成長へと回しますが、夜間が高温すぎると呼吸が盛んになり、せっかく作った糖分を消費してしまいます。その結果、株が痩せ、果実も大きくなりにくいのです。
さらに、土壌条件も関与します。乾燥状態では根が水を吸えずにストレスを受け、反対に過湿状態では根腐れを起こしやすくなります。また、チッソ肥料が過剰な場合は茎葉ばかりが茂り、実付きがさらに悪化する傾向があります。このように高温障害は「気温」「夜温」「水分」「肥料」の4つの要因が絡み合って発生します。
トマトの高温障害を防ぐ栽培管理の工夫
高温障害を完全に防ぐことは難しいですが、いくつかの栽培管理の工夫によって被害を軽減することが可能です。
まず有効なのは 遮光ネットの利用 です。夏場の日差しは非常に強く、地温や株温を急激に上げてしまいます。遮光率20〜30%程度のネットを活用することで、直射日光をやわらげ、葉焼けや果実の温度上昇を抑える効果があります。
次に かん水の工夫。日中の暑い時間帯に水を与えると土壌温度をさらに上げてしまうため、朝早くか夕方にたっぷりと与えるのが理想です。特に裂果は急激な水分変化で起こりやすいので、土壌を一定の湿度に保つことが重要です。
さらに 施肥管理 も欠かせません。高温下ではチッソ過多による徒長が起こりやすいため、リン酸やカリをバランスよく施して、根や果実の発育を促します。カルシウム不足も尻腐れ果の原因になるため、石灰資材や葉面散布で補うのも有効です。
ハウス栽培では 換気や温度管理 がカギになります。サイドや天窓を開けて風を通し、必要に応じてミスト散布や送風機を利用することで、ハウス内温度を下げられます。最近はハウス内に遮熱資材を張る方法も普及してきました。
高温に強いトマト品種の紹介
品種選びは高温障害対策の大きな柱です。近年は温暖化を背景に、高温でも安定して着果する品種が育成されています。
大玉トマトでは、「麗夏(れいか)」 や 「サターン」 が比較的高温期でも安定した着果を示します。また、王道の「桃太郎」シリーズの中にも、高温条件下で比較的安定した系統が存在します。「ルネッサンス」なども農家から評価の高い品種です。
一方で ミニトマトは大玉に比べて高温に強い傾向 があります。特に「アイコ」「千果(ちか)」は夏の高温期でも安定して収穫できると人気です。近年は営利用だけでなく家庭菜園向けにも強い品種が流通しているため、カタログや種苗会社の情報を参考に選ぶとよいでしょう。
家庭菜園から営利栽培までの実践的アドバイス
家庭菜園では、遮光ネットや敷きワラを利用した温度対策、朝夕の水やりといった基本管理を徹底するだけでも大きな効果があります。品種はミニトマトを選べば比較的安心して栽培できます。
営利栽培の場合は、さらに高度な管理が必要です。ハウス内の環境制御システムを導入する農家も増えており、換気やCO₂施用、夜温管理などを組み合わせることで高温期の収量を確保しています。また、出荷時期をずらすことで市場価格が高い時に収穫できる戦略も重要です。
今後は地球温暖化により高温リスクがさらに高まると予測されます。そのため、農家にとっては「環境制御技術」と「高温耐性品種」の両面から備えることが欠かせません。家庭菜園でも同様に、暑さに強い品種を選び、夏のピークを避けた栽培スケジュールを検討することが成功のカギとなるでしょう。
まとめ(要約)
トマトの高温障害は、30℃を超える日中や夜温が下がらない環境で発生しやすく、花落ち・着果不良・裂果・尻腐れといった症状を引き起こします。その原因は「気温・夜温・水分・肥料バランス」が複合的に関わっています。
対策としては、遮光ネットや敷きワラによる温度抑制、朝夕のかん水、肥料バランスの調整、換気による環境制御が効果的です。
さらに「麗夏」「サターン」「ルネッサンス」などの大玉トマトや、「アイコ」「千果」といったミニトマトなど、高温に強い品種を選ぶことも有効です。
今後ますます厳しくなる夏の栽培環境に備え、品種選びと管理の工夫を組み合わせることで、安定した収穫につなげることができます。
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